電話帳データベースの更新作業が大きな負担
グループ全体で約1万人の従業員を抱える日本ユニシスおよびグループ各社は今、内線電話システムのIP電話化を進行中です。最初に取り組んだのは ITサポートサービス事業を展開するユニアデックスで、2004年のこと。当時を振り返り、IP電話化の狙いを、グループ各社の総務業務を担当する日本ユ ニシス・ビジネス株式会社の井伊雅則氏 (当時ユニアデックス株式会社 管理部に所属)は次のように語ります。
「第1はコスト削減です。従来のPBXシステムは、設備費用が高額であるのに加えて組織変更に伴うさ まざまな工事のコストも膨大な額に上っていました。第2はワークスタイルの変革で、社員が持つ携帯電話と情報通信ツールを一元管理することにより、社員が どこにいても即座にコミュニケーションできる環境の構築を目指しました」
IP電話システムには、ユニアデックスのワイヤレスIP電話ソリューション「AiriP」(アイリップ)を採用しました。これは携帯電話を端末にで き、出張先でもどこにいても会社の自席にいるのと同じ感覚で電話を利用することができます。また、AiriPの「IPフォンナビゲーター」という機能に よって在席確認や居場所の確認なども可能です。
2004年に100名規模のフィールドテストを行い、2005年にユニアデックスの一部でIP電話システムの利用がスタートしましたが、運用を続ける 中で大きな問題が浮上してきました。それは、人事異動に伴うIP電話システムの変更作業が総務担当者の重い負担となってきたからです。
IP電話システムでは、社員1人ひとりに電話番号が割り振られ(契約社員、派遣社員なども含まれる)、所属・職位・参加プロジェクトなどの詳細なプロファイル情報が表示されます。
それゆえ、その情報の基となるAiriPの電話帳データベースをスピーディに変更する必要がありますが、当初この作業は、グループ総務部門のIP電話 システム担当者が人事データベースからダウンロードし、異動になった社員の情報を半自動で電話帳データベースに反映させる形で行っていました。この方法 が、スピードと効率の両面で問題となってきたわけです。
「特に毎年3月-4月期には大量の異動があり新入社員も入ってくるので、その変更・登録作業が大きな 負荷になっていました。この作業形態を今後、1万名以上のユニシス・グループ全体に拡大していった時にはさらに大きな問題になると考え、人事データベース が変更されると電話帳データベースが更新されるという自動連携を検討することにしました」(井伊氏)
変換のロジックをjBOLTが吸収する
自動連携システムは、「当初は自社開発も検討した」と 言います。しかし、グループ各社への横展開などを考慮すると、人事データベースの形式ごとに電話帳データベースとのインターフェースを開発するのは効率が 悪いと考え、ユニアデックスが商材として取り組んでいるマジックソフトウェア・ジャパンのシステム連携ソリューション「jBOLT」を採用することに決め ました。
しかし、自動連携のためのシステム開発は予想以上に難航しました。それはjBOLTの問題ではなく、人事ルールが複雑だったからです。
例えば、ある社員が同時に複数の部門に所属していたり、それぞれ別の職位を持つような場合があります。また、移動先の部門や職位によっては電話番号を公表 しないこともあり得ます。これらのケースでは、人事データベースと電話帳データベースを単純に紐づけることができません。
そこで、人事異動のパターンを整理して基本と例外を洗い出し、それを基に人事データベースの変更を電話帳データベースへ反映させる変換のロジックを明 確にしました。この現状把握のための聞き取りや抽出条件の調査に「約1年間かかりました」と井伊氏は振り返ります。
そして、最終的に整理された、「しかし複雑で煩雑な」(井 伊氏)人事ルールのロジックを吸収し 自動変換を実現したのがjBOLTです。jBOLTにより、ごく少数の例外については手動処理することとし、そのほかの大半は、人事データベースを変更す ると自動的に電話帳データベースが更新されるシステムの構築を実現しました。
jBOLTの導入以降、ユーザーは人事異動直後も、社内・社外のどこにいても自席にいるのと同じように通話・コミュニケーションが可能になっています。
システム変更が不要な点を高く評価
今回のjBOLT導入で最も高く評価されているのは、人事データベース側のシステムの変更がまったく不要であったという点です。
「人事データベースを変更することは、それを主管する人事部などとの調整が必要になり、時間のかかる ことが予想されました。また、人事ルールに手を付けシステムに合わせた変更を要請するのも、業務のやり方そのものに踏み込むことになるので避ける必要があ りました。jBOLTは、人事データベースや人事ルールをまったく変更することなく、従来通りの人事データを引っ張ってきて電話帳データベースに
反映できる点が大きなメリットでした」(井伊氏)
日本ユニシス・グループのIP電話システムは現在、1万ユーザーを超えるまでに拡大しています。この背後には、jBOLTによる人事データベース-電話帳データベースの連携があります。井伊氏は、「jBOLTよるシステム化は、弊社グループの業務のスピード化に大きく貢献しています」と評価しています。
日本ユニシス・グループでは今後、今回の導入成果を踏まえ、jBOLTを使った業務システム連携を検討していく計画です。既存システムを変更することなしに連携を可能にするjBOLTの機能が注目されています。
図 ユニアデックスの人事DB・電話帳データ連携システムの概要