作業効率を低下させる請求処理の二重入力作業
業務用の音響機器と、防犯・監視カメラなどセキュリティ機器の専門メーカーTOA 株式会社は、国内外に拠点を構え、世界120 ヵ国以上に商品を供給しています。
同社では、お客様相談センターを設け、顧客からの技術的な問い合わせや修理の依頼など受け付けるWeb をベースとしたコンタクトセンターシステムを構築しています。お客様相談センターに寄せられた顧客情報や修理の履歴など、センターで対応した内容は全てコ ンタクトセンターシステムに蓄積されます。
修理の依頼の場合には、電話で対応が済む単純な問い合わせとは違い、部品の調達や技術者の 派遣手配や、それに伴う請求業務が発生します。請求処理 は、SAPERP で行う必要があるため、SAP ERP にも請求処理のアドオンプログラムによる入力画面を設けています。
「当初のコンタクトセンターシステムではコンタクトセンターシステムとSAP ERPが連携していなかったため、それぞれのシステムに修理情報を入力する必要があり、作業効率が非常に悪かったのです。
そこで、第2フェーズではコンタクトセンターシステムから自動的にデータ連携でSAP ERP にデータが流れると一番効率がよいと考え、システム連携の方法を検討し始めました。SAP ERPは、請求と会計につながる処理に特化し、コンタクトセンターシステムは、顧客情報の処理に特化して欲しいという要請もありました。
データ連携が実現すれば、修理業務の請求に関わる部分は、コンタクトセンターシステムへの一度の入力で済みます。役割を明確に分ける、という意味でも連携が望まれていました。」
(TOA 株式会社 情報システム部長 松室 慎二氏)
短期導入が可能なjBOLT を選択
当初は、SAP ERPのアドオンプログラムを作ることや、バッチデータを書き出し、翌日夜間処理で更新をかけるという案もありました。
「しかし、夜間処理では、月末の締日に、その日のうちに請求のエラーチェックができないため、請求プロセスが回らなくなります。この問題を解決するには、オンラインでリアルタイムにシステムを連携する手段が必要でした。」(松室氏)
システムを連携させるツールを調査中、SAP関連のセミナーで紹介されたのをきっかけに、jBOLT が浮上してきました。TOA株式会社では、これまでマジックソフトウェア・ジャパンに、Magic eDeveloperのアプリケーションの開発を依頼したことがあったため、同社に情報提供を依頼し、検討を始めました。jBOLTは、SAPとのコネクタを備えているため、システム連携に特別な開発を要せず、短期間で導入が可能です。「開発工数が少なく済むため、開発コストが削減できると考え、jBOLTでの開発を選択しました。」(TOA 株式会社 情報システム部システム企画開発課長 笠井 昭彦氏)
また、一方では、別の要請もありました。TOA 株式会社では、海外の販社が基幹システムとしてSAP Business Oneを導入しているため、将来的には本社の基幹システムと連携させることを思案していました。「海外の販社とのデータ連携を行う前に、社内のシステムで先にチャレンジしてみようと考え、構築が決定しました。」(笠井氏)
メーカーの協力を得て短期間で連携を実現
構築にあたっては、マジックソフトウェア・ジャパンが提供する、スタートアップコンサルティングサービスを利用しました。
「私たちは、WebサービスやXMLの知識が全くなかったのですが、マジックソフトウェア・ジャパンに連携シナリオに基づいたプロトタイプの開発から、導入、最終的な本稼働まで、しっかりサポートして頂けて、スムーズに構築することができました。」(TOA 株式会社 情報システム部システム企画開発課 蓮池 平治氏)
「開発当初は、本当にデータが漏れることなく、SAP ERPに移動するのか不安な面もありました。連携を行うデータは、最終的に会計データにつながる重要なものだからです。」 「本稼働後の半年間はデータ落 ちがないかをチェックしていましたが、まったく問題がなかったので今は安心して運用しています」(TOA 株式会社 情報システム部システム企画開発課 上田 昭則氏)
2009年5月から接続仕様設計を開始し、8月には2日間のスタートアップコンサルティングサービスでプロトタイプを作成、9月のコンタクトセン ターシステムの完成を待って、さらに2 日間かけての連携部分の作業を実施しました。その後TOA 内での実装、テスト稼動を経て10月にシステム連携が実現、本稼働しました。短期間で構築できた一番の要因について、蓮池氏は、「一 番大きな理由は、jBOLT で構築したことです。jBOLT は、コンポーネントなど、視覚的に見て理解できるので、イメージしやすかったというのが大きいと思います。また、構築中試行錯誤はありましたが、連携まで のフローがきているので、それに添っていけば構築できたというのが大きな理由です。」
システム連携により、請求処理の一元化と作業効率の削減を達成
今回の連携について、松室氏は、「WebシステムとERP の連携をERP 側のアドオンプログラムなしに、標準BAPI とjBOLTの組み合わせにより短期間で構築でき、修理請求に関わる業務の作業の効率化が実現できた」と評価しています。
TOA 株式会社では、海外の販社や生産工場についても順次、社内SAP ERPの連携の具体化を思案中で、実績/受発注データの連携テストはすでに実施済みです。
jBOLTでのさらなるデータ連携が期待されています。