TOAS の5つの基本コンセプト
TOAS の狙いは、商工会議所が事業活動により入手する情報を正しく蓄積し、全所的に情報共有し活用できるようにすることでした。
従来は、業務ごとにシステムが構築され、かつ連携が取れていなかったので、全所的な情報共有が不十分であったのはもちろんのこと、システムの変更や改修に膨大な手間とコストがかかるという問題を抱えていました。
そこでTOASでは、次の事項を基本コンセプトに開発を進めることとしました。
・システムを変更することなくデータ項目を追加できる
・全てのデータ項目を条件検索できる
・どのようなフォーマットの帳票でも印刷できる
・どのようなタイプのPCでもTOAS が稼働する
・どのような規模の商工会議所でも利用できる
しかし、情報共有の基盤を作るといっても、商工会議所が事業を進める上で共有・管理する情報の種類は膨大な数に上ります。それらを統一の規格で一元的に管理しようというのですから、相当な困難が予想されます。実際、TOAS 開発以前にはそうした点が障壁となり、標準規格がありませんでした。
メタDB 作成用にMagicを採用
TOAS の前段となった標準仕様書の開発チームは、この課題をクリアするためにデータ中心の設計手法を採用することとし、各種データを統一規格化する「メタDB」を作成しました。このメタDB の作成に採用されたのが、Magicです。標準仕様書の開発チームの一員で、TOAS 開発を一貫して手がけてきた松本商工会議所の米窪英人氏(情報事業部部長)は、標準仕様書の開発について次のように振り返ります。
「同一の事項であっても商工会議所ごとに独自の名称や命名規則が当てられていたので、『事業所とは何か』『事業所コードとは何を指すか』といったことを含めて商工会議所の事業に関わるすべての事項を洗い出し、規格化を進めていきました」
この規格化に使用されたのはMagic の「タイプ辞書」という機能でしたが、次に、標準仕様書に基づくTOASを開発する段になった時に、「Magicであれば、メタDB のデータをそのまま利用してシステム開発できることが分かりTOAS の開発ツールとしてもMagicを採用することにしました」と米窪氏は説明します。標準仕様書のメタDB用に採用したMagic が、図らずもシステム開発用のツールにもなったことで、開発作業は「非常にスピーディに、手戻りなく行うことができた」(米窪氏)と言います。
Magic の「タイプ辞書」は、後継のMagicでは「モデルリポジトリ」と名称が変わりましたが、データの属性を定義することによってスピード開発と高いメンテナンス性を実現する機能はまったく変更がありません。
3 種類の形態でTOAS が利用可能
TOAS はWeb 版となり、大幅に機能拡張されましたが、現在は①会議所内導入、②データセンターへTOAS サーバをハウジング、③ASP / SaaS 事業者のTOAS サービス、の3つの利用形態を選択できるようになっています。
②③は、TOAS 運用のための管理要員を配置することができない商工会議所向けですが、このうち③はすでに238 カ所が利用中です。
SaaS は今でこそ大きな注目を集めていますが、日本商工会議所のTOAS は、それよりずっと以前から利用が開始され、すでに多くの実績を上げています。これも、Magic ベースならではのいち早い展開だったと言えます。
約20 年の歴史を持つTOAS は、使い勝手と開発生産性を追求してきたMagic の歩みと、ユーザーの既存資産を守り続けるというマジックソフトウェア・ジャパンの企業理念の両方を如実に映し出したアプリケーションです。
マジックソフトウェア・ジャパンではこれまでも、全国の中堅・中小企業を支援する商工会議所の活動理念に賛同し、TOASの導入・活用を円滑に進めるための全面的なサポートを従来より推進してきましたが、今後も、TOAS の普及を強力にバックアップしていく計画です。