C/Sシステムの販売に限界を感じRIA化を決断
インネット株式会社は、C/Sで開発していたアパレル向け基幹業務システム 「ATS」をMagic uniPaaSでRIA化しました。「ATSR」は、アパレル業の受注・発注から仕入、出荷、売上、といった物流の仕組みに加えて、請求から回収までを網羅したシステムです。企画・生産や直営店管理もオプションとして計画しています。
RIA化に着手したのは、2009年10月。その背景について、インネット株式会社専務取締役土屋博氏は、次のように語ります。
「当社は、30年前からアパレル向けのシ ステムを開発してきました。古くから導入頂いているお客様の場合、時が経つにつれて、サーバーの保障期限切れやWindowsのバージョンが古くなるなど の問題がでてきます。しかし、そこで新しい設備の導入を提案しても、景気動向が不透明な今、予算の関係で断られることがしばしばあります。C/Sシステム には行き詰まりを感じ始めていました。」
さらに、昨今、ASPやSaaS、クラウドといった新しいサービス提供形態が話題となり、「イニシャルコストを安くして、お客様にサービスを提供できないかと考えスタートしました。」(土屋氏)
自社でサービスを提供するに当り、環境構築の初期投資の発生や、ユーザーのデータを預かることの不安もありましたが、「リスクを躊躇していたら将来性がない」(土屋氏)と考えてRIA化への決断をしました。
SaaSでもRIAなら優れた操作性を実現
SaaSでのサービス提供は、Webアプリケーションでも同様に構築できますが、Webブラウザを使うWebアプリケーションの場合、Enterキーが 使用できません。「ATSR」のような業務系アプリケーションにおいては、Enterキーの使用は必要不可欠で、操作性に大きな影響を与えます。
これに対しRIAは、Enterキーが使え、C/Sのメリットである操作性や表現力を損なわずにサービスの提供が可能です。一方で、Webアプリ ケーションのメリットである、通信環境を選ばないこと、また導入が容易であることも合わせ持っており、RIAでの開発が決定しました。
2009年10月から、2か月間の検証を経て開発に着手。その後、半年を要してRIA化が実現しました。開発の苦労について、インネット株式会社APプロジェクトリーダーの小島要氏は次のように語ります。
「C/Sとは動きが違うため、最初は画面のコントロールサブフォームや遅延トランザクションに関 係した部分で苦労がありました。しかし、マジックソフトウェア・ジャパンの協力を得て、問題を一つ一つ解決していきました。更に、試行錯誤を重ねて開発を 進めるにつれ、動作も把握できるようになりました。開発工数としては、Webシステムのマージと比べれば断然速いと思います。」
「Magic の良さは、様々なPCやサーバー等のプラットフォームのOSのバージョンの違いを吸収し てくれるところです。当社ではVBやC#など他の言語で開発しているシステムもありますが、例えばWindows XPからVistaへの移行時には、ソースコードの手直しが必要になった、などの問題が生じることがあります。その点Magicは、新しいOSのバージョ ンでも必ず使えるようになるだろう、という安心感があり、その分ユーザーの操作性や機能強化等に集中することができます。お客様に安心して提供することが でき、開発者としては、非常にメリットを感じています。」(土屋氏)
RIA化によってユーザーへの提案の幅が広がる
「ATSR」は、インターネット、LAN、WAN対応で、多様なネットワーク環境下で利用が可能であり、さらにWindows Mobileにも対応し、利用シーンを広げています。「モバイル版は画面が小さいため、機能を絞り込んでいる」と土屋氏。
実際に導入しているのは、現在2社。その他数社が導入予定です。C/SからRIAのシステムに移行したユーザーも「違和感なくご利用頂いています」(土屋氏)。
C/Sと比べてレスポンスは変わらず、商談の席のデモでは、インターネット経由でサーバーにアクセスしているにも拘らず、「今使っているC/Sのシステムよりも速い」という声もあると言います。
また、RIA化して商談時のユーザーの反応が大きく変わったと言います。今までのC/Sシステムでの提案では、話すら聞いてもらえない事がありましたが、SaaSでのサービス提供の提案であれば、前向きに検討して貰える事が格段に多くなりました。
「今期は、40ID(1ユーザー1ID)を目標としています。SaaSでのサービス提供により、通信環境を選ばないサービス形態が実現した今、「ATSR」のさらなる機能充実を図り、全国展開を考えていきたいと考えています。」(土屋氏)
今回のRIA化について、「ユーザーへの提案の幅が広がった」と土屋氏は評価しています。それは、ユーザーの要望が多かったイニシャルコストを抑えた低価格でのサービス提供に応えることができるからです。
これからの展開について、「当 社は、ユーザーの問題解決を提案していく会社を目指しています。今 回のRIA化によるSaaS形態の実現に加え、jBOLTでメールやWeb等、他のシステムとの連携を組み合わせれば、提案の幅はさらに広がります。 ATSRという製品と共に、事業を発展させていきたいと考えています。」