基幹システムSAP Business OneとDynamics CRM連携の必要性
山川克広 氏
株式会社エフコム |
|
伊藤重博 氏
株式会社エフコム |
株式会社エフコムは、経済産業省が認定する「システムインテグレータ(SI)」として企業登録されています。事業内容は、SI、ソフトウェア開発、トータルアウトソーシング(IDCサービスを含む)など。幅広いシステム関連事業を展開している会社です。
2009年4月、「工事契約に関する会計基準」が改正され、ソフトウェア会社も工事進行基準の適用対象となりました。そのため、これまで使用していた自社開発の基幹システムでは対応しきれなくなり、基幹システムの総入れ替えを行うことになりました。
基幹システムには、SAPジャパンのERP製品「SAP Business One」、工事進行基準に対応したエルテックス社のプロジェクト原価管理システム「east Project」 、顧客のサポート情報管理のため、Microsoft社の「Dynamics CRM 4.0」の導入をそれぞれ決定しました。
SAP Business Oneとeast Projectは、Magic jBOLTを使った統合事例があり、エフコムでは、SAP Business OneとDynamics CRMも同様に統合する計画でいました。
その目的について、山川氏は次のように語ります。
「CRM導入以前、顧客管理にはグループウェアを流用していましたが、各部門や個人で保有している情報を共有することができませんでした。
そこで、SAPに各種マスタ情報の入力作業を集約し、リアルタイムにCRMとつなぐことで、情報のタイムラグや精度の問題を解決できると考えました。シス テムを横串でつなぐことによって、整合性の取れた一貫したものにしようとしたのです。」
脱開発者依存とノウハウ継承容易性を考え、連携ツールにMagic jBOLTを採用
「当初、jBOLTにはCRMのアダプターが無かったため、システムの連携には『.NET』 でソースコードを書く予定でした。
しかし、その後2009年10月頃にマジック・ソフトウェア・ジャパンからjBOLTにDynamics CRMアダプターを追加するという話がありました。
Dynamics CRMはマイクロソフト製品なので「.NET」で開発すれば連携可能であることはわかっていましたが、連携後の改修や機能拡張の際には、どうしても最初に作った人に依存してしまいます。
この点、jBOLTであれば、担当者が変わってもメンテナンス可能であり、ノウハウの継承も容易に行えます。今後のメンテナンスやカスタマイズ性を考えると、ソースコードを書くよりjBOLTを選択した方が良いと考え、11月から検証を始めました。」(伊藤氏)
初めての試みながら、メーカーSEの協力を受け連携に成功
当時jBOLTのDynamics CRMアダプターは、リリース前の状態で、 SAP Business OneとCRMをjBOLTでつなぐのは、世界で例がないことでした。そこで「導入に当たっては、アダプターの動作を一つ一つ検証し、確認してから取り入れてゆく形をとりました。」(伊藤氏)
Dynamics CRMアダプターの検証を開始したのは2009年11月。連携後のシステムは、2010年4月末にリリースされました。
「短 い開発スケジュールの中で、アダプターの検証や運用の過程で問題が生じることもありましたが、マ ジックソフトウェアのSEの協力もあり、解決できない問題はありませんでした。事前に検証できたところのみを取り入れていったため、問題なく開発が進んで いったということが言えると思います。
またjBOLTは、最初に検証し雛形さえできてしまえば生産性が格段に良く、コードを書かなくて良い分、『.NET』サービスを使うよりも効率が良かったと思います。
試行錯誤の連続でしたが、今回の連携で得たノウハウは、今後のビジネスにも活かしていけると感じています。」(伊藤氏)
連携により案件情報・顧客情報等の全社共有化基盤を確立
システム連携にあたっては、データの整合性を取るため、SAP Business OneからCRMへの一方向の連携としました。案件管理から受注・請求までの一括の流れをSAPで行い、取引先情報や案件・受注情報の入力をトリガーにし てアダプターを介し、数分足らずでCRMに反映されます。
社内SAPの利用者は、営 業・購買・経理の三部門に所属する70名程度と限られていますが、CRM はほぼ全社員が利用しています。jBOLT でのシステム連携により、SAPから入力された、商談先の案件情報・受注情報・請求情報・入金情報・原価情報がCRMで閲覧可能となり、情報の全社共有化 が実現されました。」(山川氏)
連携ノウハウの今後の活用の可能性
今後のjBOLTの活用について、山川氏は次のように語ります。
「基幹システムを構築したばかりですが、今後SAPとCRMで、やり取りしたい項目が増えてくる可能性は当然あります。また、今後ECサイトを構築して、その注文データをjBOLT経由でSAPに流すといった、拡張サイトでのデータ連携が考えられます。
更に、サポート部門でも、現場で行った対応の情報や見積り情報を、その場でモバイルを利用してjBOLT経由でSAPに入力するなど、他のシステムとの連携も考えられます。jBOLTは拡張性があり、様々な可能性を秘めていると感じています。」