機能的かつ使いやすさが最大の要件
浅間山と八ヶ岳に挟まれた風光明媚な長野県佐久市に本社を置くアサマソフトウェアは、 2009年1月に「e-Net少額短期保険株式会社」の少 額短期保険業務用システム「NEWS」を開発しましたが、「業務を大幅に省力化する優れたシステム」として評判を呼んでいます。
少額短期保険とは、保険金額が少額かつ短期間の保険をいい、2006年4月に施行された新しい制度です。家財関連の少額短期保険を専門とする e-Net少額短期保険株式会社では、2008年5月に事業者登録の申請を行い、3カ月あまりで認可が下りるだろうとの予測の下、事業開始に間に合うよう 短期間でのシステム開発をアサマソフトウェアに要請しました。
システムの概要は、保険代理店がWeb経由でログインし、契約情報の 入力や家財物件情報の登録・メンテナンスを行えるというものです。代理店担 当者の中には40代以上のPCの操作に習熟していない人も少なくないため、機能的であると同時に使いやすさが最大の要件となっていました。
依頼を受けた同社では当初、画面周りはHTMLで、業務ロジックはマジックソフトウェア・ジャパンの開発フレームワーク「Magic uniPaaS」を使って開発を進めました。しかしこの方法では、業務ロジックを修正するとそれに関連する画面プログラムを手直しする必要があり、「数カ月という短期間で開発を完了させるにはフィットしない」(代表取締役の小林紹ニ氏)との結論に至りました。さらにHTMLベースの画面では、クライアント/サーバー型システムにおけるクライアント・ソフトのような柔軟な操作性を望めず数々の制約が生じるため、「そうした点の解決も課題として浮上していました」と小林氏は振り返ります。
Magic uniPaas RIAへ急きょ切り替え
そこで同社が注目したのが、当時販売がスタートしたばかりの「Magic uniPaaS RIA」でした。この製品は、Magic uniPaaSのオプションとしてリリースされた新機能で、業務ロジックを記述すると、実行エンジンがサーバー側ロジックとクライアント側ロジックを自動 的に判別して分割・配布し、サーバーとクライアント間で同期を取りながら実行するという優れものです。言い換えると、開発者は業務ロジックの開発だけに専 念でき、通信処理や同期制御などを考慮する必要がありません。
「Magic uniPaaS RIAを採用した結果、開発生産性は約2倍に、開発期間は半分に短縮したと見ています。しかも画面はリッチで機能性にあふれ、使いやすくまとまっていま す。より手の込んだ凝った画面を作るにはHTMLやJavaScriptを駆使すればよいのでしょうが、その必要がないくらいMagic uniPaaS RIAは完成度の高い画面を生成します。“シンプル・イズ・ベスト”です」と小林氏は評価します。
開発に割いた要員は1名で、約3カ月で完成にこぎ着けています。e-Net少額短期保険が当初想定した事業開始日に間に合わせることができました(実際の事業認可およびシステムのサービスインは2009年1月)。
また同社では、NEWSのサービスイン(2009年1月)直後にプログラムの改変を急きょ行いましたが、小林氏は「Magic uniPaaS RIAの威力を改めて実感した」と語ります。
「少額短期保険では、被保険者の保険金額が1000万円(複数契約合算で5000万円)以下と規 定されているので、契約時にはそれを確認するための名寄せが不可欠になります。NEWSの初期バージョンでは名寄せ用プログラムを別に設け、名前と生年月 日で検索できるようにしましたが、申込画面で入力する被保険者の名前を利用すれば自動的に名寄せできると考え、サービスイン後1週間で変更しました。変更 はサーバ側だけで済み、クライアント側の画面とロジックは自動配信される仕組みを持つMagic uniPaaS RIAでなかったら、これほどの短期間では改修できなかったと思います」
既存パッケージへの組み込みASP版への展開
同社は今、NEWSを核に多面展開を推進中です。1つは、同社が1992年に開発した不動産業向けパッケージ「リアルエステート・システム」か らNEWSへアクセスする仕組み(e-Net少額短期保険連動機能)の組み込みです。不動産業では、賃貸物件の管理に家財保険や家賃保証保険など各種事務 が密接に関係してくるので、不動産業務の一連の流れの中で処理できるようにしたものです。
もう1つは、リアルエステート・システムのASP版で、ユーザーはRSAセキュリティ社のワンタイム・パスワード「RSA SecurID」などを使ってアサマソフトウェアのASP用サーバーへログインし、利用します。
小林氏は「こうした多面的な展開も、Magic uniPaaSベースだから簡単に行えます」と 語ります。同社では、1990年代からMagic uniPaaSを使ってソフトウェア開発を進めてきており、リアルエステート・システムもその1つです。また、SI案件もすべてMagic uniPaaSで開発しています。NEWSの開発で、ツールをMagic uniPaaS RIAへ急きょ切り替えることができたのも、Magic uniPaaSの十分な経験と技術的な蓄積があったからと言えます。
「90年代のオー プン化・ダウンサイジング化の中で、システム開発に最適な言語を探索した結果、 Magic uniPaaSの前身であるdbMAGICに行き着き、選択しました。dbMAGICはその後、大規模で複雑な基幹システムも構築できる現在のMagic uniPaaSへ成長しますが、非常に使いやすく生産性の高いツールであると評価しています。弊社は今後も、Magic uniPaaS一筋でやっていくつもりです」
アサマソフトウェアは、今回のNEWS開発によって、不動産業システムに強いソフトウェア会社という評価を高めています。