■光学技術とナノテクノロジーで世界をリード
日本は素材大国です。世界トップクラスの技術力を持つ素材化学会社が日本のものづくりを支えています。そのような素材化学会社を代表する1社が株式会社オハラ様です。創業は1935年。「戦前、戦後を通じて光学ガラスのリーディングカンパニーとして、各種光学機器向けのガラス素材を開発・供給しています」と、企画財務センター企画管理部 次長 兼 管理課長 副参事 高井俊彦氏は説明します。
人類初の月面着陸に成功した宇宙船アポロ11号にオハラのガラスが搭載されました。ハワイ島のマウナケア山頂にある天文台すばる望遠鏡にもレンズを提供。これを継承する超大型反射望遠鏡の建設にも同社のゼロ膨張ガラス(極低膨張ガラス)が採用されています。
同社のもう1つの柱が、特殊ガラス製造で培ったナノテクノロジーを生かした高機能材料です。「耐衝撃・高硬度クリアガラスセラミックスやリチウムイオン伝導性ガラスセラミックスなどを展開しています」(高井氏)。
■「IFS Applications」で基幹システムを刷新
同社がERPパッケージを採用して基幹システムを構築したのは2000年問題が話題になったころのことです。Windowsサーバーで稼働するクライアント・サーバー型システムでした。
「光学ガラスの製造は、極めて特殊な工程や管理項目が多いことから、旧ERPシステムはフルカスタマイズで業務に合わせました」と高井氏は振り返ります。
OSに依存したシステムであったことから、Windowsのバージョンアップが大きなハードルとなりました。この課題が2010年ごろから顕著となり、2013年から刷新を検討、本格的にプロジェクトとしてシステム刷新に取り組んだのは2017年のことになります。
「基幹システム刷新の最大の方針は『長く使えるシステム』にありました」と高井氏は強調します。ノンカスタマイズで使えるパッケージを候補として選び、2018年8月、最終的に採用を決定したのが「IFS Applications」(以下、IFS)でした。
IFSは製造業向けの豊富な標準機能を実装し、多くのプロセス製造業での導入実績を持っています。
■アドオン開発ツールに「Magic xpa」を採用
同社は斬新な製品開発に挑戦し、製造品目は同じとは限りません。経営環境も目まぐるしく変化しており、海外子会社との連結経営管理も求められています。
これら条件をクリアするのがIFSであり、構築ベンダーがキーウェアソリューションズ株式会社でした。キーウェアソリューションズも当初からノンカスタマイズを推奨しており、アドオン構築用のツールとして提案したのがマジックソフトウェアの「Magic xpa」でした。
「オハラ様はこの先、20年、30年使い続けたいと考えています。これに対応できるローコード開発ツールは『Magic xpa』以外ありませんでした。『Magic xpa』はすぐに陳腐化するツールではありません。MS-DOSの時代から使っているシステムがまだ現役で働いています」と、開発を担当したキーウェアソリューションズ株式会社 IT基盤構築本部 シニアエキスパート 車 健一郎 氏は語ります。
『Magic xpa』は30年以上も前のOSで稼働し、現在のWindowsはもちろん、iOSやAndroidのモバイル端末でも機能します。
「OSが変わったからといって捨てざるを得ないシステムがいくつもありました。自分たちで作ったシステムを捨てるような悔しい思いを、もうしたくありません。『Magic xpa』ならそんなことはないと確信しました」と情報システム課長補佐 御手洗 睦氏は採用の理由を語ります。
■基幹システム稼働後は自社内でプログラム開発
販売管理、生産管理、購買管理(調達管理)、売掛管理、在庫管理、買掛管理をIFSで構築し、品質管理システムと専用帳票出力を「Magic xpa」でアドオン開発してAPI連携しています。「品質管理においては、極めて微細な屈折率を管理しており、製造レシピも複雑を極めています。これを基幹システムに取り込むのは無理がありました」(高井氏)。
新基幹システムは2020年11月に稼働を開始。アドオンの構築ツールとして「Magic xpa」を活用していましたが、稼働後も継続して機能追加用のプログラムを開発しています。
「今まで企業内SEとしてコーディングしてきましたが、それをローコードに置き換えていくのはさすがに抵抗がありました。しかし、実際にできあがったプログラムをキーウェアソリューションズから示されて、指導を受けながら吸収できるようになりました」とプログラム開発を担当している御手洗氏は語ります。
構築したシステムの1つに進捗状況の大型画面で表示があります。また、品質チェックのデジタル化を進めており、たとえばガラスの製造途中で脈理という不具合が生じることがあります。この脈理を検査員が手書きで残していましたが、デジタル化により集計・分析できるようにしています。これはキーウェアソリューションズ IT基盤構築本部 石井啓太氏が担当しています。
■2倍以上の生産性と高品質
システムを刷新して、目に見える効果にはデータの一元管理があります。
「基幹システムに複数のサブシステムがあり、それぞれにデータベースを持っていたのですが、『Magic xpa』を利用することで、散在していたデータの一元管理が可能となりました」と高井氏は効果を語ります。
御手洗氏は「Magic xpa」の生産性を高く評価しています。
「実際に比較しているわけではありませんが、2倍以上の生産性でプログラミングできていると思います」(御手洗氏)。
改修も早くなっています。通常であれば設計を見直して実装してテストしてという手順が必要ですが、「Magic xpa」はその場で試しにやってみて、動いたらそれで完成となります。
「品質にも期待しています。旧システムは自分たちで手を加えたものですからバグが発生しているところもありました。『Magic xpa』はバグが内在しにくいと思います」と高井氏は付け加えます。
■20年以上使い続ける基幹システム
「今後、DX化の流れを避けることはできないでしょう。DXには『Magic xpa』があれば大きな武器になります」と、御手洗氏は断言します。DXは文字どおり、デジタル化が前提になっています。検査結果をデジタル化し、それら一連のデータを残しておくことで、エラーの際の対処のスピードアップ、傾向や分析からエラーの予兆もつかむことができます。
「一番の期待は20年後に同じものが動いていることです」と高井氏は笑顔を見せます。
最後に「Magic xpa」を検討している方へのメッセージをお伺いしました。
「確かに『Magic xpa』によりプログラミングの生産は上がり、開発時間を短縮できます。しかし、いきなりできるわけではありません。まず『Magic xpa』のロジックを理解しなければいけません。この行程が欠かせません。しかし、指導してくれる人がいて、1本完成させると後が早いですね。同じロジックで次々に完成させていくことができます。サポートしてくれる部隊が重要となります」という言葉をいただきました。